シュタインズゲート 49日目 「see you」

WS007656.jpg

まゆりと心を通わせた翌日、オカリンは考え事をする為に再びラジ館の屋上に来る。

そこでは紅莉栖が大の字になって寝ていた。
なにやら考え事をしていたようである。

と、その時突然の夕立。
オカリンも紅莉栖もずぶぬれになり、あわててラジ館に入る。
そこは人工衛星…実際はタイムマシンだが、それによって屋上部分が半壊したまになっており、電気も通っておらず薄暗い。
まるで廃墟のようになっている。

2人は階段に横に並んで座り、ずぶ濡れになってしまった体を拭きつつ目が慣れてくると、紅莉栖のしどけない姿に、白衣の肩口が破れてしまったオカリンが見えてくる。
建物に入る際に引っ掛けて破いてしまったのだ。
それをたまたま持っていた裁縫セットで不器用に直してくれる紅莉栖。意外にもこう見えて家庭的なのか。
とりとめもないことを話しつつ茶化しあう二人。
そうしないと、やっていられないから。

これから紅莉栖に、死を告げるのだから。

しばらく気まずい沈黙が流れた後、紅莉栖は口を開く。
まゆりを助ける為に何度もタイムリープして一人戦っているオカリンの姿を、彼女もデジャブな感覚で見ていた。
それほど岡部はまゆりのことを愛してるんだなと。だからそんな一生懸命な岡部に協力してあげたくなった。
だから岡部はまゆりを助けるべきだと、彼女は言う。
彼女もまゆりと、あるいはフェイリスやルカ子と同様、重なった世界線を夢やデジャブのような形として認識できるのだ。

私は大丈夫。昨日も話したように岡部の主観では私は死んでしまうわけだけど、私はこの世界線では現に生きているわけで。
岡部がβ世界線に行った瞬間、私の居る現在のα世界線は岡部という存在が初めから存在していない世界になるのかもしれない。
あるいは、β世界線に拒否されている私は、この廃墟のような世界に一人だけ残されて他はみんなα世界に行ってしまうのかもしれない。
あるいは、私だけ消えてしまうのかもしれない…
あるいは…



かもしれない、かもしれない、かもしれない…!
でもだからって、まゆりを見殺しにしろなんて言える訳無い。
二人とも助けるなんて虫のいいことは不可能に決まっている。
だけど私を選んだらあんたのことを一生恨むと、紅莉栖は叫ぶ。

彼女は、達観してもなく冷静でもなかったのだ。
自分が消えてしまう恐怖と、昨日からずっと一人で戦ってきた、いたいけな少女なのだ。
たかだか18歳の少女にそこまでのものを背負わせてしまったオカリンは思わず彼女を抱きしめ、そして決断を下す。

WS007724.jpg

紅莉栖を世界から排除する決断を。

どうしてもまゆりを救いたいから、紅莉栖は救えない…

「わかった…」と彼女はつぶやき、ラジ館を去り、そして…
ラボからも去る。
「ちゃんとやるべきことをやりなさいよ」という内容のメールを残して。
メールの題名は「see you」。「good bye」ではないところに、救いがある。あるいは、願い。

その夜、まゆりがラボにやってくる。
今日はコミマの日だったが、まゆりはオカリンが気になって行かなかったのだ。

まゆりは常々、オカリンの重荷になりたくないと思っていた。
何故ならまゆりが祖母の死に直面して壊れかけていた時、それを救ってくれたのがオカリンだから。
だから、今度はまゆりはオカリンの役に立ちたいと、ずっと思っていたのだ。
それが、先のタイムリープ前に死に行くまゆりが放った言葉の真実だった。

まゆりはオカリンの悩む姿は見たくない。何でも聞きたい。共有したい。そう訴えかける。
全てが終わりに近づいている今、オカリンは遂に、まゆりに真実を語る。

鈴羽のこと、フェイリスのこと、ルカ子のこと、萌郁のこと、FBのこと、綯のこと、そして、紅莉栖のこと――

まゆりは泣きはらす。
皆そんなに重いものを引きずって、戦ってきたのか。なのに私は…
どうあっても紅莉栖に会いたいと、まゆりは切に願う。
紅莉栖はその願いを聞き入れ、明日の早朝に会ってくれるという。


早朝。

彼女は大きなキャリーバッグを持っていた。
アメリカに帰るためだ。

WS007833.jpg

思わず紅莉栖に飛びつくまゆり。
自分を助けるために消えないでと、涙ながらに訴える。
訴えるが…

「でも、あなたは岡部にすごく愛されてる。あなたが消えたら、岡部はすごく悲しむ。」

だから――私が消える。
同情されても、自分が惨めになるだけ。
だから、振り返らない。

「あなたは、幸せになりなさい。」

そう言い残し、彼女は始発の電車に消えていった。

オカリンは紅莉栖を犠牲にし、まゆりを選んだ。
これはもう、ただのエゴだ。
まゆりを失いたくない。ディストピアな未来などよりも、ただ、まゆりを失いたくないのだ。

まゆりはこれまで見てきた夢――自分が死んでしまう、それを何とか助けようとしているオカリンの夢。
何度も何度も見てきた夢。
それは全て真実だったと、今確信した。

「幸せに、してください」
まゆりは涙に塗れた笑顔で、オカリンに訴えかける。

それが、紅莉栖との約束だから。


その日の昼、ラボに集うオカリンとダル。
IBN5100の解析を終えているダルにより、もうSERNのデータベースをクラックできる準備は出来ている。
キーを押せば、「牧瀬紅莉栖が殺された」、このメールがデータベースから消える。
それにより、世界は戻る。
まゆりが死なない、SERNのディストピアも達成できない、本来あるべきβ世界線に。

一時は8人にまで増えたラボメンも、今は再び3人に戻った。
かけがえの無い仲間たちを犠牲にして、ついにオカリンはここまでたどり着いた。
勝利の時は来た。
今度こそ、全てが終わる。

白衣の肩口に施された、紅莉栖が不器用に縫ってくれた跡をぐっと握り締めつつ、
オカリンは手を振り上げ…

WS007940.jpg

キーを押す。

世界は、再構成される――!
関連記事

コメント

非公開コメント