2022/10/31
ランス03 14日目 「志津香失踪」

ホッホ峡殲滅戦のどちらが勝とうと、魔人アイゼルとしてはどうでも良い。
ただ絶望の中で希望を信じ切れる、人の持つ美しき輝きを見ることが出来れば。
どうもキザが過ぎるこの魔人は戦場に降り立ち、一方で残しておいた3人の使徒たちには崖上からの魔法攻撃を行わせる。
黒色破壊光線と呼ばれるそれはマリアの戦車チューリップ3号を追い詰めていく。
この戦車が無ければこの戦いは瓦解する。志津香は魔術師ながら離脱しこの使徒たちを倒しに行くが…
そこに現れたのは魔人アイゼル。
無敵結界は魔法に対しても絶対の防御を誇る。
当然志津香の適う相手ではない。
体中から血を流し、魔力も付きかけ、ズタボロになる志津香。
が、それでも志津香は諦めない。
前作のラスボスである魔術師ラギシス。
自分にも誰にも絶対倒せないと思っていた仇敵を、この戦いを率いている緑色の口の大きいバカが倒した。
そうした出鱈目を見てしまった以上、諦めるという選択肢は志津香には無い。
そううそぶく志津香に対し、アイゼルは…
そして志津香は、失踪した。
志津香と入れ違いになる形で、ランスは使徒3人組に食って掛かる。
本来かなりの強さを誇る彼女らであるが、魔法攻撃を連発してへろへろなので強さとしてはそれほどでもない。
ヒーリングさえしっかりしておけば簡単に倒せるであろう。
かくしてホッホ峡殲滅戦はランス達の勝利に終わる。
敗北を悟ったヘルマン将軍トーマはしんがりを買って出て見事に去って行ったのであった。
トーマの率いる第3軍はヘルマン最強。それの敗走に慌てるのはリーザスでふんぞり返っているパットン。
しかしもふんぞり返っている場合ではない。あまつさえパットンが本国へ行った援軍要請も断られたのだ。
自分の力を父皇に認めてもらうために起こしたこの戦役は、父皇がパットンを切り捨てることで終わりを迎えようとしていた。
更に…

魔人間で内紛が起こる。
魔人筆頭であるホーネットの部下であるノス・サテラ・アイゼル。
彼らは主…すなわちホーネットへの助力の為にパットン達人間どもを利用していた。
ホーネットは考えの全く異なるケイブリスと呼ばれる魔人と対抗しており、劣勢に立たされていたからだ。
ところが、少なくともノスにとってはそれは見せかけだった。彼が動いていたのは真の主の為だった。
それが誰なのかは、まだわからない。
ノスは野太い腕でサテラの胴を貫き、楽しそうに笑う。
色々ときな臭くなってきたこの戦いの中で、志津香は…

目を覚ましていた。
傷は、すっかり手当されていた。彼女を助けたのは…魔人アイゼル。
アイゼルは人々の抗う姿を審美していた。
だがそれは審美などではなかった。
詳細は分からないが、彼はかつての魔王ジルに膝を屈し、心を折られ魔人になったという。
誰でも必ず心折れるはず。自分がそうだったのだから。
なのに志津香だけは折れなかった。洗脳術すら効かなかった。
それを見て彼は気付いたのだ。
美しいから人の強さを愛でていたのではなく、人の弱さを再確認し、あの時膝を屈した自分は正しかったと納得したかっただけだ。
本当に強い存在に巡り合った魔人は志津香に思いを寄せようとしたが、志津香は振りほどく。
人と魔人は決して相入れないものだからだ。
実に耽美的な展開であるが、志津香にそうさせたのは、緑色のあのバカへの複雑な思いだ。
こうした描写が出来るところがランスシリーズの強みであろうか。
安らぎを捨て、志津香は再び荒野を行く。
あの気に食わない、緑色の口の大きなバカモノの元へ戻るために。