銀河英雄伝説 (ボーステック)

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■紹介
1989年、PC用にボーステックより発売されたシミュレーションゲーム。
田中芳樹氏の同盟の小説を元に、宇宙での艦隊戦を手軽にシミュレーション。
システムが簡潔でとっつきやすく、かつ優秀であるため、相手やこちらの動きが原作さながらの動きを見せる。
追いつ追われつの展開、大艦隊同士のぶつかり合い、同時多方面攻撃、複数の艦隊による時間差惑星占領などなど。
AIが優れているわけではないのだが、システムが優れているためそのような動きが実現できている。
しかも当時としては大きなアニメ・豪快なSEで艦隊の砲撃や爆破がビジュアル化されており、爽快感も半端ない。
余分な要素を取り除き、原作を読んでいる時に味わう熱さをとことん追求したそのシステムは非常に高評価だ。
正直思い出補正は強いが、このゲームをやった時は銀英伝を読んだことが無かった。それでなおこの面白さだ。
故に銀英伝を知れば、その面白さはもう何倍にもなる。傑出したゲームと言える。

■評価
A

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銀河英雄伝説 簡易攻略

■初めにすること
・増援で提督を呼び出す。特に拘りが無ければラインハルト・キルヒアイスあたりで
・税率がデフォルトで10%前後であり、これだと惑星の反乱がおきやすい。4%あたりにまで下げること
・艦艇を生産し、提督艦に合流させ配備する。生産する艦艇は巡航艦(C)・戦艦(B)・攻撃空母(A)・補給艦(S)だけで良い
・陣形は、巡航艦を外側、戦艦を内側、攻撃空母を2部隊ほど旗艦前方、補給艦を3部隊ほど旗艦後方に配備
・編成中は常に戦闘モードで行うこと。そうでないと相手の奇襲攻撃に対応できない

■戦略
・編成が完了したら、戦闘モード状態で相手が攻めてくるのを待つ。
・相手の索敵艦を検知したら一気に攻める。(相手が攻撃態勢でない場合が多く、一方的に攻撃出来る場合が多いため)
・キャンペーン版の場合生産レベルがあるので、相手があまりにも攻めてこない場合こちらから攻めるのも手
・移動中も急ぎで無ければ戦闘モードが良い。相手の索敵艦を一方的に攻撃できるため
・こちらの索敵は基本的に出さなくても良い。陣形の外側に巡航艦を置けばそれである程度索敵になる

■戦闘のコツ
・戦闘機は短距離、レーザーは中距離、ミサイルは長距離で最も威力を発揮する
・戦闘入力の際にデフォルトでカーソルが付く武器が最も効率的な武器なのでそれを参照にする
・ただし巡航艦の戦闘機はあまり戦力にならず、レーザーの威力は弱め。これらは相手を全滅させたくない時に使う
・相手の旗艦部隊を全滅させれば相手麾下の全ての部隊は弱体化する。基本は旗艦に集中攻撃
・相手の旗艦部隊は攻撃空母の戦闘機攻撃×2+こちらの旗艦部隊攻撃で大抵全滅できる。これを目安に無駄打ちせずに
・こちらの士気・艦艇数で先制攻撃できる率が上がる。艦艇数が減り過ぎたら素直に下がる
・艦艇数が下がっても迅速に補充できるように、補充用の艦隊を作っておくと良い

■占領のコツ
・提督が優秀でも、こちらの全体の艦艇数が少ないと占領効率が悪い(キャンペーン版の場合)。
・ターン制限のあるマップでは、ミッターマイヤー等速い提督で各惑星を迅速に占領していくのも良い
・ただし相手の提督の位置を完全に把握していないと返り討ちに合うので、用兵に自信が無ければ素直に待ち伏せ戦法で

銀河英雄伝説 7日目(最終回) 「宇宙をこの手に」

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同盟軍最後の提督パエッタを倒したラインハルト。
すると…唐突にエンディングが始まった。

キャンペーン的にはまだまだマップが残っているのだが、同盟軍の提督を全滅させると強制的にエンディングらしい。
彼我の艦隊の損害が報告され、そして…ラインハルトと死んだはずのヤンの顔が並び、決戦の日は近いで締められる。

ヤンは生きていたのか!さすが魔術師である。
しかしビュコック爺さん見殺しにするのはヤンらしくもない。まぁトリューニヒトに軟禁されてたということにしておこう。
トリューニヒトというのは原作に出てくる、同盟軍の所属する自由惑星同盟のトップだ。
あらゆる政治家の悪い所ばかりを集めたような政治家で、同盟の悪いことは全部トリューニヒトのせいで片付くので便利だ。

それにしても随分簡素なエンディングだが、ネットを漁ってみるとある情報を聞く。
一番最後のキャンペーンシナリオまでクリアすればちゃんとしたエンディングが見られると。
何と。では真偽を確かめてみようではないか。

そこでパエッタを倒す前までロードし直し、敢えてパエッタを逃がす。
そしてパエッタに手加減を加えつつ惑星を制圧していく。
すると同盟軍は敗北を認め撤退するの報。そうして次のマップに移る。

因みにこの時点での時系列は外伝でいうレグッニツァ上空遭遇戦の前。
つまり本編の前日譚である外伝の更に前の戦いだ。
この時点で同盟軍はパエッタ残して全滅なので、その後の同盟によるイゼルローン要塞制圧などは当然無理なはず。

が、しれっとそうしたマップがどんどん繰り広げられる。
パエッタ一人でアスターテ会戦でボロ負けし、イゼルローン要塞を制圧し、調子こいてアムリッツア会戦を引き起こす。
パエッタ一人で。
凄いのかどうしようもないのかよくわからない。

そしてやはりアムリッツアでボロ負けし、反転攻勢に出た帝国軍は帝国要塞ガイエスブルグをワープさせイゼルローンと対峙。
これが最終シナリオだ。

因みにこのゲームはマップをクリアするたびに評価が下される。
ラインハルトは大体無双しているので提督レベルが1~3必ず上がる。

提督レベルは上がるほど士気と指揮できる直属艦隊の隻数が増える。
前者は高ければ高いほど先制攻撃できるようになり、後者はそれがそのまま攻撃力に繋がる。

荷物持ちのキルヒアイスも何だかんだ有能なのでやはりそれくらい上がる。
一方我らがパエッタはボロ負けしてばかりで、ボロ負けすると提督レベルが下がる。

というわけで、最終マップであるイゼルローン要塞奪還作戦では…

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脅威のレベル1。
これはあらゆる提督の中でぶっちぎりの最下位であり、直属艦隊も300隻しか率いることができない。
この数はそこらへんの名無し艦隊指揮官と同じである。
一方ラインハルトはレベルが上がりにあがり、パエッタの2倍以上の780隻の直属艦隊を率いることができる。

このマップの目的はイゼルローン奪還だが、肝心のイゼルローンには原作で言う超巨大高火力波動砲のトールハンマーは無い。
ただ防御力が高いだけの要塞なので、そのままパエッタと一緒に押しつぶして終了。

こうしてまたもやボロ負けしたパエッタは…

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無惨な戦績により、またもやレベルが下がる。
前人未踏のレベルゼロ提督爆誕。
同盟軍の人材不足もここに極まれりだ。

さて、ともかく最終マップもクリアした。
これで真のエンディングが見られる。
それは…!

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ただのテキストだけであった。
どうしようもないオチを付け、ラインハルトは遂に宇宙を手に入れた。
戦いの趨勢が決した後は、パエッタをいじって遊んでいただけというむなしい勝利だ。

まぁ原作とは違いキルヒアイスは生きているので、ラインハルトはきっと良い人生を歩んでいくことであろう。
多分。

銀河英雄伝説 -完-




■感想

このゲームは正確にはキャンペーン版であり。無印銀英伝の追加キットだ。
今のネットゲームでいうテキストパッチ程度の物であり、建て増し感満載のゲームであった。
しかしシステム自身はすでに完成されているので、やはり今やっても面白かった。

彼我の距離を測り、時には逃げ時には突っ込み相手に膨大な出血を強いる。
その描写も当時としてはかなり派手なSEで、戦略がハマり相手が次々と破壊されていく時の爽快感は半端ない。
このゲームを初めてやった時は銀英伝の存在すら知らなかったのだが、その気持ち良いゲーム性にすっかり魅了されたものだ。
ましてや銀英伝のコンテンツを殆ど嘗め尽くした現在、このゲームは当時よりさらに楽しめたと思う。

当時のPCで高度なAIはもちろん無理なのだが、システムの妙で敵前回頭し撤退と見せかけたインターセプト。
惑星の同時占拠、アスターテ会戦の如き三方向同時攻撃からの一点突破。
そうした原作さながらの展開に、余分なストレスを与えず、ただ敵を打ち破る爽快感に特化。
まさしく原作を読んでいる時の高揚感がそのまま体験できるのだ。

このシリーズは後年7作も続くのだが、そこまでのロングセラーになった潜在力を充分感じさせる、素晴らしいゲームであった。

銀河英雄伝説 6日目 「パエッタ大いに逃げる」

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ヤンにビュコックという同盟軍最強クラスの提督を破ったラインハルト。
後はもう消化試合であろう。

前回ラインハルトが惑星トルーダンから惑星カプチェランカへ大返ししている時、後ろから追うものが居た。
同盟軍第2艦隊提督パエッタだ。
原作で有名なアスターテ会戦の3馬鹿提督(失礼)の一人だが、ムーアほどパワハラではなく実力はそれなりと思われる。
ただ銀英伝にありがちだが彼もまた主役級を立てるために頭を悪く描かれている不幸な提督だ。
見事汚名を返上できるだろうか。

さてこのパエッタ。
ラインハルトがカプチェランカに急行している隙にトルーダンを取るのが戦略の筋だと思うのだが、何故かそこには目もくれない。
ひたすらラインハルトを追いかけてくる。
カプチェランカを制圧したアル・サレムと挟撃をかまそうと言うのか。そうした戦略もあるであろう。
しかしこちらは常勝の天才ラインハルト。アル・サレムとついでにビュコックを蹴散らし、返す刀でパエッタに向かうと…
全力で逃げて行った。

流石にもう他に提督は居ないだろうと思ってパエッタを追いかけてみると…今度はカプチェランカを第10艦隊ウランフが襲う。
ウランフは同盟軍でヤンが認める数少ない提督の一人であり、その攻撃力は目を見張るものはある。
そしてこのタイミングでカプチェランカ急襲。タイミングもベストであり敵ながらあっぱれ。さすがである。
慌てて引き返しウランフを叩きに行くラインハルト。どうも彼も行ったり来たりで落ち着かない。

ウランフを倒しに急行するラインハルトをパエッタは…挟撃しない。
ひたすら北東のヴァンフリート目指して移動している。
これも何かの戦略なのだろうか。明らかにウランフは捨て駒にされてしまっている。
同盟軍の中では有能提督とはいえ、ラインハルト&キルヒアイスコンビに敵うわけなく瞬く間に殲滅される。

こうして再びパエッタを追いかける。
ヴァンフリートまで逃げていくパエッタを追いかけていくと…


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4時の方向に敵影。
第8艦隊アップルトンだ。
柑橘系な名前だが、アムリッツァで最終局面まで生き残っただけあってそれなりに有能とは思う。
まぁそこそこ有能な提督故にビッテンフェルトのかませになってしまったのだが。

こうして挟み撃ちに引き込むのがパエッタの戦略だったのか。
すわ反転攻勢してくるのか、と身構えていると、パエッタはアップルトンを全力無視して惑星ヴァンフリートでゆったりしている。

戦略も何もなく、彼は本当にただ逃げていただけであった。
全くもってどうしようもない。これでは汚名返上どころか汚名倍増である。
かくして…

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無能が大嫌いなラインハルト様、パエッタをボッコボコのメッタメタにする。
ちなみにアップルトンは当然の如くラインハルトの怒りに任せた攻撃でとっくの昔にケシズミになっている。

残りの同盟軍の提督は…
居ない、居ないぞ。
原作ではまだモートンやルグランジュが居るはずだが、そんな人物はこのゲームには居ない。
これが容量不足なのか時系列的な矛盾回避か(アッテンボローが提督やってたけど)忘れていただけなのかはよくわからぬ。

というわけで同盟軍最後の提督、ラスボスとしては非常に締まらないパエッタを倒した。
すると…!

銀河英雄伝説 5日目 「遅刻ビュコック」

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こちらの工業力が低下しきってから攻勢をかけてきた魔術師ヤン。
おかげでラインハルト虎の子の戦艦や巡航艦が破壊されても、工業力の低さから補充できずじり貧となる。

なので長期戦は不利であり、あまりしたくないのだがヤンを追撃し撃破しようと試みる。
するとそれを見透かしたかのようにボロディンによるインターセプト。

原作さながらの攻防が繰り広げられるが、とすればこちらも原作では常勝の天才ラインハルト。
その統率力は並ではなく、ボロディンをたちまち蹴散らし逃げるヤンを追いかけていく。

この宙域ではこれまでルフェーブル・ムーア・ボロディンの3提督を倒した。
これまでの宙域は2提督を倒すとクリアだったので、おそらくここはヤンを倒せばクリアであろう。
というわけでこちらの宙域での帝国軍本拠である南西に位置する惑星カプチェランカ。
こちらに守備兵を置かず、全力でヤンを追撃する。こうして…

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北西の同盟軍惑星トルーダンで体勢を立て直すスキをヤンに与えず、ラインハルトは全火力を持ってヤン艦隊を全滅させる。
魔術師、還らず。
その名称に違わず、ヤンはラインハルトを最も苦しめ、出血を強い、ギリギリのところにまで追い詰めた。
こちらの工業力が低下した今、あと少しヤンのトルーダン到達が早ければ結果がどうなっていたかわからない。
これでこの宙域で倒した提督は4人。さすがにこれでもうクリアであろう。

ところが…
戦いはまだ続いていたのだ。
ヤンを倒してクリアと思いきやそうはならず、なんとこの宙域唯一の帝国軍拠点である惑星カプチェランカを制圧せんとする者が。
同盟軍提督アル・サレムである。
原作ではアムリッツァの戦いでミッターマイヤーのかませになってしまった同盟軍屈指の空気キャラだが、思わぬ見せ場が。
もしここでカプチェランカを失ったらラインハルトの敗北が確定する。
ヤンは命を懸けて、この魔術を遺していたのだ。

そこでラインハルトはトルーダンを電撃制圧。同ターンでアル・サレムはカプチェランカを制圧。
この判断が遅れていればラインハルトの負けは確定していた。
さぁ反撃だ。
常勝の天才を舐めた報いを受けてもらおうか。
返す刀でカプチェランカに猛攻を仕掛けるラインハルト。

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怒りに任せすぎ、もう隊列がぐちゃぐちゃである。
こうしてアル・サレムはケシズミとなり、やれやれやっとクリアかと思いきや、なおもレーダーに反応。
相手は…同盟軍では珍しい良識派かつ有能な老将ビュコック
士官学校を経ず、一般の砲兵からたたき上げで同盟軍元帥まで上り詰めた、同盟軍の事実上のナンバー2である。
傲慢なラインハルトですら敬意を表した数少ない同盟軍提督の一人であるビュコックが、遂に立ち上がったのだ。

が…なんと3部隊しかいない。
原作での実直でいぶし銀光る経歴に見合わぬ、あまりにお粗末な陣立て。
一方ラインハルトは25部隊+キルヒアイスの5部隊という万全の体勢。
当然…

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民主主義に完敗とか盃を交わす余裕すらなく、一瞬で宇宙の塵になる。
ゲーム的にはアルサレムがカプチェランカを制圧し、慌てて呼んだのがビュコックの部隊だということであろう。
ロクに部隊を揃える時間も無くいきなりラインハルト隊の攻撃空母すぐ隣にポップしたものだからたまったものではない。
余りに哀れな最後なので、同盟軍トップのトリューニヒトと色々揉めていた結果とでも脳内補完しておこう…

こうしてこの宙域での熱い戦いは終結…しない。
どうやらまだ生き残りの提督がいるようだ。

しかし主だった相手の提督はこの戦いでほぼ死んでしまった。
残りの提督で原作に見せ場があったのはウランフくらいか。
後はもう消化試合であろう。
最大の宿敵ヤンが死んでしまったのは、後世の歴史家に戦を嗜みすぎと叩かれたラインハルトとしては物足りない。
が、そのヤンに拘って後年何百万もの将兵を死なせたラインハルトであるから、これで歴史家の筆も少しは柔らかくなるか。