トキオ 〜東京都第24区〜(アートディンク)

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■紹介
1995年、アートディンクより発売されたPC版箱庭シミュレーションゲーム。

当時流行していたシムシティータイプのゲームであり、とある都市の市長になるという点も似ている。
ただそこは尋常ならざるアレンジを加えることには定評があるアートディンク。

担当する都市はただの都市ではない。
地球の衛星軌道上に浮かぶスペースコロニー・東京都第24区「トキオ区」なのだ。

宇宙コロニーと言うだけはあり、酸素を供給したり隕石で割れたコロニーミラーを修理したり月の物資を地球に売ったり。
かと思えば「区」なので公共施設やごみ処理場や浄水場、防犯や防火対策もしなければならない。
そして「区長」なので人事権も握ったり議会で条例を制定したり。と思えば外出して色々な料理屋で物価リサーチもできる。
建物の一つ一つにはいろいろな人々がいて、それぞれ一人ひとりに電話をかけてると色々なお話を音声でしてくれる。
テレビを点ければ今流行っている流行の髪型のアナウンサーが毎日ホットな話題を提供してくれる。
更にお祭り好きなトキオ区民。毎月頭には必ず大通りを練り歩くパレードを行う。
このどこの追随も許さない(そもそも追随する発想すら思い浮かばない)ゲーム性、これぞアートディングゲーの極みである。

■評価
A-

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トキオ 〜東京都第24区〜 簡易攻略

■序盤
・貨物シャトルを二つずつ買い、それぞれ地球便・月面便に配置。資材購入分-売却分=10~100になるように配分し資金確保
・月資材売買で財政安定化を図るならば、旅客シャトルは増やさなくていい(税金や航空費・インバウンドで稼ぐなら別)
・公共施設で優先すべきは病院・学校・公園・公民館・老人ホーム・消防署・警察署・浄水場
・特に公園・公民館・老人ホーム・消防署・警察署は一つの町につき4つ以上、病院・浄水場は6つ以上は欲しい
・何をしたらわからない場合は住民に電話をかけ要望を聞く
・産業振興は満遍なく上げる。大体300億円あれば一つずつ上げられる。リサイクル産業を多く上げればゴミ処理場要らず
・研究開発で優先すべきは貨物シャトルの改良・空飛ぶ車の開発(渋滞率が大幅に緩和される)。あとはお好みで
・最初の選挙が一番つらい。選挙1か月前に所得税・法人税の減税や酸素税の廃止・航空料金値下げ等で支持率を上げておく
・逆に言えばこれらの政策は選挙1~2か月前までは施行しない方がいい
・選挙は支持率50%前後なら勝率はギリギリ、60%以上ならほとんど負けない
・バグかもしれないが、ロード直後はなぜかセーブ直後より支持率が10%ほど下がっている。選挙前にゲームを終了しないこと

■中盤
・各町に上にあげた公共施設以外の施設(美術館等)をそれぞれ一つずつ配置
・物価が高い時は産業振興で一次産業に投資
・ゴミが多い時は産業振興でリサイクル産業を上げる。ゴミ収集車は出来るだけ多く買っておく
・貨物シャトル・旅客シャトルの開発は4回までできるので優先的に進めておく
・財政が安定してきたら税金を一つずつ撤廃していく。あまり予算が多すぎると支持率が下がっていく
・ここまで来ると支持率が下がる大きな要因はミラー破損くらいしかない。画面が暗くなってきたら定期的に修理
・ミラー修理でも支持率が上がらない場合、住民の電話を基に天気を調整、公共施設・水質・ゴミ・治安・消防の満足度チェック
・ただし支持率は常時±2~3%変動するので、大幅に低下していなければそう気にしなくてもよい

■終盤
・制御装置・バイオ農場化計画は永続的に開発できるので、することがなくなったら進めておく(効果はよくわからない)
・人口が20万人を超えると「日本から独立」の条例を発議できる。ただし支持率が80%以上はないと否決されやすい
・日本から独立が出る条件は、他にマップがすべて埋まっている・開発がすべて終わっているなどの条件があるかも(未検証)
・支持率8割は全税制を撤廃し、航空料金を安くし、物価を安定させれば達成できるはず
・落選以外のエンディングは多分無いと思う。日本から独立しても永遠にゲームは続く

■バグ
・公園が多すぎると、8月5日の盆踊り終了後必ずゲームがクラッシュする
・対応としては公園を減らすか、7月下旬~8月6日以降まで制御区などのモードにしてトキオ区の地図は映さないようにする
・8月に入ってから制御区に移ると、祭りを過ぎてもずっと盆踊りをしていたりする。気になる場合は公園を再配置すれば消える

トキオ 9日目(最終回) 「日本から独立」

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トキオ区で出来ることはすべてやり切った。
残された最後の政策…それは、日本から独立するというものだ。

人口が20万人を超えると議会でこれの発議ができる。
(他に、コロニーのすべての空きスペースを埋める、全ての研究開発をする、支持率が8割前後といった要件があるかもしれない)

これまで圧倒的な強さで選挙を勝ち抜いてきた区長、当然議会も区長派が過半数以上を占めている。
が、それであってもなおこの法案の成立は厳しい。
ケンケンガクガクの論議が交わされ、そしてついに――

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可決
東京都第24区であったトキオ区は、この法案を以て日本から独立する。

そして翌月の10日後…

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トキオ区がトキオ国として、新たな主権国家の誕生を全世界に宣言する。
5月10日。それはトキオが日本から独立した記念日。インデペンデンスデイだ。
日本から独立というわけだが、別に独立戦争を起こしてコロニー落としをしたりするわけではない。
トキオ第一小学校の校歌が、小学生のへっぽこな演奏で奏でられるだけだ。
つまりOP曲と同じなのだが、それとはまた微妙に調子が違っている。わざわざこの日のために書き起こした曲なのだろう。
この力の入れ加減がずれまくっているところが実にこのゲームらしい。

かくして地上…ではなく軌道上に、全世界が羨む超完全完璧福祉国家が誕生した。
税金無し・食料自給率100%・20歳から毎月15万円支給・脅威の低失業率・高い治安と防火体制・膨大な緑地面積…
文字通り、天国である。

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夜が明けても、雨のさなかでも、住民たちは独立記念日のパレードを続ける。
まぁひな祭りやらミストキオ祭といった毎月の祭りも同じ調子なのだが。

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住民からの電話は、区長を称える声。最後のあいさつが「いふいふ」なのもトキオフリークとしては嬉しい。

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テレビをつけてみる。
相変わらずトキオでは妙な髪型が流行っている。
その髪型は今だといろいろ物議をかもしそうな気がするのだが…

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その後3年ほど区長運営を続けてみた。
人口も順調に増え、支持率も殆ど変わらず。
それはそうだ。これほど完成された福祉国家は、過去にも、そして未来にもおそらくないだろうから。
区民のために走り続けた区長は、区民の笑顔のために、これからも永遠に走り続けるであろう。

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トキオ 東京都第24区

- 完 -

(追記)
実際区長の政権は未来永劫本当に続くのか、学生時代試したことがある。
今とは比べ物にならないくらい重く嵩張る98noteを机の上に置き、放置。
人口が増えたことによりリサイクル施設も限界を迎え、ゴミがそこら中にあふれ出す。
上水道もきれいな水を供給しきれくなり、犯罪率も上がる。
コロニーのミラーが割れても殆ど修理せずのズボラ運営。
だがそれでもなお税金無しとベーシックインカムのおかげか、西暦3000年を迎えてもなお、区長も区民もピンピンしていた。

区長も歳を取らなければ、園児はいつまでも「裏の田んぼにマッカチンがいるんだぜ、いいだろー」と言っている。
閉鎖空間における輪廻という、実にSFチックな世界を堪能したのであった。




■感想

90年代のアートディンクは輝いていた(今も頑張ってると思うけど)。
作るゲームは全てエッジが効いており、このゲームもただのシムシティーの模倣では終わっていない。
いかにもアートディンクらしい、知的でおもろいわけのわからないエッセンスがちりばめられていた。
あまりこういう言葉は好きではないのだが、とても日本的というか。

かつて日本は欧米の電化製品を模倣し、模倣だけにとどまらず大小さまざまなエッセンスを加えたそれは世界を席巻した。
バブルは弾けたものの、まだそのような力が日本にあるとみんなが信じ切っていたこの時代。
トキオもまた、洋ゲーを更に昇華して世界を席巻するパワーがあると、本気で信じていた。
少なくとも私は。

90年代前半は、そうした未来への希望が何だかんだ一番大きかった時代ではないだろうか。
だからこそトキオやら光栄のスーパードッグワールドのような、どうすんだこれ…みたいなゲームでも続々商品化されていた。

windows95という黒船が日本市場を一掃するまで、日本のPCゲーム界は駘蕩としたぬるま湯のような世界だった。
ここまでのんびりとした時代は今後しばらくは、あるいは永遠に来ないのかもしれないが、そんな時代でこそ生まれた「トキオ」。
私としては、それはとても居心地のよいものであった。

おわり

トキオ 8日目 「ベーシックインカムを導入」

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財政も安定し支持率もすこぶる良く、開発も順調に進んでいる。
住民からが相変わらず結婚の催促の電話が届く。
ちなみにいふいふというのはトキオ区におけるあいさつの一つだ。
トキオ区の住民は流行に非常に敏感であり、文頭と文末が数か月おきにコロコロ変わる。
この場合もしもし→if・if→いふいふということであろう。
真顔で解説してもしょうがないのだが…つまりトキオとはこのようなゲームだ。

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これまで研究していた反重力装置もついに完成。
これをビルに取り付けると…ビルが浮いた!
で、これによってこの世界がどうなるかと言えば、どうにもならない。画面が見辛くなるだけである。
支持率が上がるわけでないし、ビルが浮くことでビルとビルが空中衝突しないよう建築制限がかえってきつくなった。
意味がないのである。意味がないことだらけなのだこのゲームは。
意味がないことを存分に楽しもう。
そして3秒ほど意味の無さを楽しんだところで、非常に見辛いので即座に右下のボタンを押して輪切り俯瞰にしよう。
この意味の無さを楽しむ数秒のために7300億円…このゲームの凄味がお分かりいただけたであろうか。

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やがてコロニーの開発もついに終わった。
これまで骨組みだらけだった宇宙ステーションの壁がすべて埋まる。
これですべての面に広告を張り付けることができるようになった。
大変喜ばしい事である。何が喜ばしいんだよっと思うようではこのゲームを楽しむのは10年早い。

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というわけでそろそろこのゲームも堪能しきってきたので、いよいよ次なる政策…20歳から年金支給に挑む。
トキオ区では、65歳以上の住民に毎月12万円ずつ支給する年金体制になっている。
これを20歳以上の住民に毎月15万円ずつ支給するよう変更するというものだ。
つまり今流行りのベーシックインカムというやつだ
このゲームが発売されたのは1995年。時代を先取りしすぎである。
で、実践してみると…

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毎月180億円くらいの金が吹っ飛ぶが、このくらいなら区営ビジネスで何とでもなる金額だ。
支持率も一気に5%あがり、町によっては90%を超えたところもあった。
次の区長選挙も余裕でクリアした。

だが、この支持率を維持できたのはせいぜい2,3か月であり、あとはまた80%前後に戻った。
人間の欲には際限がなく、月々15万円くれるなら次は20万円、30万円くれよになるのは当然だからだ。
民主主義において政治家は大衆によって選ばれる。
しかし大衆迎合したところで空しい結果になるだけなのだ…という現実を突きつけられる。
誠によく考えられたゲームと言えよう。何も考えてないかもしれないけど。

さて、ベーシックインカム的な政策も通した。税金もすべて撤廃し、食料自給率も産業も充実している。
雇用や教育、医療体制も整え、来るべき高齢化社会のために老人ホームもたくさん作っている。
リサイクル施設も充実しゴミは一切出ず、治安も消防も渋滞管制も依然として高レベルだ。
反重力装置をはじめ数々の謎の研究もすべて実現させた。
これでもう、やれることはあと一つしか残っていない。
それは…

・現在の人口…19万7472人(+42126)
・現在の支持率…77%(-3%)

トキオ 7日目 「反重力装置開発」

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所得税・法人税・酸素税を廃止したことで、すっかり区長の座は盤石となる。
区営ビジネスである月資材売買も堅調であり確実に利益を積み重ねていく。

これ以降だと支持率が下がる要素はあまりなくなる。
留守電を聞けば、暑くて寝れないのでもう少し気温を下げてくれとか、老人ホームを近くに建ててくれといった要望はある。
が、これらはその要望に応えられなくてもそう大きく支持率が下がるわけではない。
ただ浄水場・消防署・警察署の不足は市民生活に直結するので、町を開発するときに町ひとつにつき3つ前後はあるといい。
またお金を貯めすぎても支持率は減るので、後述する反重力装置を開発する場合は注意されたし。

この時期に来ると支持率が下がる一番の要因はコロニーミラーの破損であろう。
トキオ区は宇宙コロニーなので、ミラーから太陽光を摂取しコロニー内を照らしている。
ところが隕石やらデブリやらでミラーが定期的に壊れ、放置していくとだんだんコロニー内が暗くなっていく。
そうなると支持率が下がるのだが、暗くなると実際画面も暗くなるのでわかりやすい。
今トキオを取り巻く危機的状況は、せいぜいそのくらいなものである。
まことにもってのんびりとしている。

このゲームは次から次へと起こるトラブルに対処するというより、コロニーの区長であることそのものを楽しもうという設計だ。
上の画面はトキオのテレビ番組だが、トキオ内では流行というものがあり、現在流行している髪型がアレということだ。
そういうところを楽しむのが、このトキオというゲームなのだ。

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観光投資しまくると旅行項目が増えインバウンドが期待できる。
インバウンドと言っても宇宙コロニーなのでツアー内容も過激である。
これは項目を設定するだけであり、数値が上下するだけでゲームがどうこうなるわけではない。
こういう世界そのものを楽しめということだ。
砂場を提供しておくのであとは適当に遊んでいけ、というのは洋ゲーやアートディンクゲーでは割と基本である。
この点が私がこのゲームが大好きな理由なのだが、合わない人は徹底的に合わないかもしれない。

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今更だがこのゲームではいろいろな研究開発ができる。
この研究開発には、シャトルの積載数や乗客数を増やすといった必須の研究も多い。
が、実際は車をロボットにしたり公園を二重構造にして空に浮かせるラピュータ計画といったよくわからない研究が殆どだ。
そのよくわからないものの最たるものがこの反重力装置の開発であろう。
ビルが宙に浮き画面が大変なことになるので、しばし待たれよ。あまり良いものではないが…

なお反重力装置の研究には7330億円もかかり、ここまで貯めこむとさすがの住民も支持率が下がっていく。
なのでこの政策は選挙が終わってすぐの方が良い。

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そんな科学者のお遊び(本人はまじめに研究しているのだろうけど)に付き合うほど、政務運営は万全だ。
「何不自由なく生活できる」と、住人の評判もすこぶる良い。

画面の右上のごちゃごちゃした絵はこのコロニー全体のマップであり、つまりトキオの開発ももうすぐ終わる。
後は年金体制をちょこちょこいじってから、ひたすら人口拡大政策を推し進めようと思う。
その政務の行きつく果てで、トキオ区はある選択をすることとなる――。

・現在の人口…15万5346人(+57584)
・現在の支持率…80%(+11%)