2019/10/07

かつて700年前に存在した古代国家イース。
イースの女神たちが生み出した巨大な黒真珠は、魔法とクレリアと呼ばれる金属を生み出し、最盛期を迎えた。
しかしその黒真珠はクレリアと反応し意思を持ち、ダームと呼ばれる魔物となり、人類に反旗を翻した。
全てを悟った女神たちは黒真珠の力を持ってイースを空中に逃がす。
そしてクレリアは地下深くに埋められ、女神はダームを封印。
二度と黒真珠が暴走せぬようその胸に抱え、永遠の眠りについた。
それは数多くのイースの人々を死に至らしめ、世界の危機すら引き起こしたことに対する贖罪なのか。
700年後、イースという国や女神の存在はもはや伝承としてかろうじて残るほどに忘れられた頃。
人々の欲望はクレリアを掘り出し、銀という名で流通させた。
その繁栄に警鐘を鳴らしたとある神父は、欲に駆られた村人に惨殺された。
神父はかつてのイースの神官ファクトの子孫であり、その子供の名はダルク=ファクトといった。
クレリアの流通とともに魔物と、そしてまず女神のひとり、レアが目覚めた。
魔を封じるだけでなく、倒すことの出来る剣士を捜し求める為に。
その後黒真珠を抱えていたフィーナも遅れて目覚める。
あるいはクレリアに反応し復活した黒真珠の魔の余波で、強制的に目覚めさせられと言うべきか。
黒真珠は誰にも手出しできない、廃坑の奥の更に奥深くに鎮座し、天空のイースで目覚めた魔物にも指令を送った。
再び魔物の力で世界を席巻せよと。
だが、その野望は女神と神官の子孫たちの力を受け継いだ一人の少年によって打ち砕かれる。
クレリアの剣に想いを込め、渾身の力で遂にダームを打ち破った。
全てが終わった後、アドルは神官の子孫たちと、リリアと、そして二人の女神と大団円を迎える。
皆がアドルを祝福する中、女神のひとり、フィーナだけは一言も話すことが出来ない。
あまりに想いが溢れすぎて。
その機微を読み他の人々は立ち去り、夕暮れの中、アドルとフィーナだけが残される。
今なら、思いの丈を言えるはずだ。
けれど…
かつて少年は、目覚めたばかりで記憶を失っていた女神のひとりフィーナを助け出し、ともに冒険し、魔物だらけの山を登頂し、レベルアップさせ、山賊の砦に連れ込んでビビらせた。
ろくでもない思い出のようだが、フィーナにとってそれはかけがえのない思い出となった。
全ての頂点に立っていた女神が初めて、一人の少女のような気持ちで一人の少年と付き合うことができたのだ。
その思い出さえあれば、これからの冷たい永劫の時間も怖くない。

「
お別れです」
女神たちがこの世界に残した功績を差し引いてもなお、この世界に残した傷跡は重いものだった。
傷跡は消せない。出来ることは、ただ癒すことだけだ。

千の言葉も、万の想いも交わすことなく、少女は少年の元を通り過ぎる。
自分は少女ではない、女神なのだ。責任は、果たさなければならない。

かくて少女たちは石となり、自分たちが生み出した負の遺産である黒真珠とともに、未来永劫地底の奥深くで眠り続ける。
赤毛の少年が残してくれた思い出という名の埋火を抱きつつ――
そしてこのドヤ顔である。アドルがよりにもよってドギといっしょに旅に出た気持ちもわかる気がするぞ…
イースⅠ&Ⅱクロニクルズ -完-
恒例の評価。
88版どころかX1版からイースをやっている自分としては、このゲームが面白くなかろうはずは無い。
今の視点からするととにかくあれをやれこれをやれと指示の多いゲームだなぁと思ったが、それも時代相応である。
またオリジナル版にあった強引な展開も、セリフを変えたりしてマイルドにしているところも好印象。
グラフィックも素晴らしく、クロニクルになってより今っぽくなった絵も素晴らしい。
音楽もオリジナル(イースⅠ・Ⅱ完全版)の他88版も入れているのもポイント高し。
88版原理主義者の私には嬉しいが、市場的にはPCE版の方が最も貢献してるだろうけど。
かつてイースについて1分でも楽しんだ思い出があるのならば、文句無しに買いである。
イースを知らない向きには、現在まだ続いているイースシリーズのすべての原点である本作は、より一層全速力で買いである。
おまけ。
フィーナとレアにプレゼントしまくって好感度を最大にすると、

フィーナとアドルを残してレアが立ち去るときにウィンクする。
「
うまくやんなさいよ」的な何かである。
お姉さんは何でも知っているのだ。
さすがアドルより684歳以上年上なだけはある。